近年の国内外にて頻発する中大規模地震に端を発して、建物の耐震性能に対する関心が高まりを見せたのはご承知の通りですが、それに加えて2005年に発覚した所謂「耐震偽装問題」は更に全ての建物への信頼性を大きく損ね不動産業界全体の基盤を揺るがし始めています。特に建物の耐震性能決定に最も深く関係する業務である「構造設計業務」に対しては当然のごとく世間の厳しい視線が注がれています。
このような状況を踏まえて、当社では適正な投資環境の再構築を目的とし、建物安全性の根幹部分をなす「取得済み及び取得予定物件に対する構造設計の検証・評価義務」を実施しております。従来のデュー・デリジェンスにおける建物診断に加えて、適格且つ厳正に構造設計の評価・検証を行うことによって設計が適正に行われたことを確認するステークホルダー・マネジメントの視点からも今後益々重要であると確信しております。
年代 | 地震 | 規模 | 全壊(棟) | 半壊(棟) | 耐震基準の改訂 |
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1891 | 濃尾地震 | M8.0 | 142,177 | - | 1920 市街地建築物法 |
1923 | 関東大震災 | M7.9 | 109,000 | 102,000 | 1924 同上耐震規定 |
1946 | 南海地震 | M8.0 | 11,600 | 23,487 | |
1948 | 福井地震 | M7.1 | 36,200 | 11,816 | 1950 基準法改訂 |
1964 | 新潟地震 | M7.5 | 1,960 | 6,640 | |
1968 | 十勝沖地震 | M7.9 | 673 | 3,004 | 1971 基準法改訂 |
1978 | 宮城県沖地震 | M7.4 | 1,183 | 5,574 | 1981 新耐震設計 |
1983 | 日本海中部 | M7.7 | 934 | 2,115 | |
1993 | 北海道南西沖 | M7.8 | 750 | 2,440 | |
1995 | 兵庫県南部 | M7.3 | 104,900 | 87,000 | 1995 耐震改修促進法 |
2000 | 鳥取県西部 | M7.3 | 435 | 3,101 | 2000 性能設計法 |
2001 | 芸予地震 | M6.7 | 70 | 774 |
構造計算を行うには建物を解析用の数学モデルを置換することが必要です(解析モデルの作成)。その過程で様々な仮定や条件設定が必要となり、構造技術者の技術的判断が介在することになります。コンピュータを用いて計算を行う場合も同じで、建物の状況を正しく反映した入力データ(解析モデル)を作成するには、仮定条件の設定や技術的判断が求められます。設計者によって仮定条件の設定や判断は様々ですが、解析モデルが適切な判断や仮定条件の元で作成されていることが重要です。
構造計算は意匠図に示される条件に構造的な条件を加えて行うため、構造計算書、構造図、意匠図の間には矛盾が無いことが求められます。構造設計の妥当性は、適正な仮定条件や技術的判断・評価に基づいて計算され、計算と設計図(構造図、意匠図)の間に大きな矛盾のないことを検証、確認することにより総合的に評価します。